研究課題/領域番号 |
21520692
|
研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
松尾 美恵子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (20072423)
|
研究分担者 |
深井 雅海 聖心女子大学, 文学部, 教授 (60072427)
藤田 英昭 公益財団法人徳川黎明会, 徳川林政史研究所, 非常勤研究員 (70414084)
小宮山 敏和 公益財団法人徳川黎明会, 徳川林政史研究所, 非常勤研究員 (40442561)
|
キーワード | 幕府 / 史料 / 水野忠央 / 新宮 / 丹鶴城 / 目録 / 和歌山 / 学習院 |
研究概要 |
(1)史料群の成立過程・伝来経緯の解明 昨年度に引き続き、水野忠央収集の幕府史料と、他機関に伝わる幕府史料とを比較検討するため、首都大学東京付属図書館所蔵の「浜松藩水野家文書」の調査を行った。同文書には、老中等の幕府役職に就任していたことに伴って作成されたと推定される史料が多数残されており、その点では水野忠央収集の幕府史料との親近性を窺わせる点も見えてきた。しかし、水野忠央収集の幕府史料の原本と一見して判断できるような史料は、今回の調査段階では未発見であることから、水野忠央収集の幕府史料は浜松藩水野家文書とは類似しつつも全くの別史料であるか、大幅な再編集の行程を加えた史料であると推定でき、水野忠央収集の幕府史料の持つ固有性や重要性が一段と明確化されることとなった。近代以降の伝来の経緯についてはこれまでに収集した史料にもとづき検討を加えた。 (2)水野忠央の政治的役割と幕府史料収集目的の解明 本年度は、なぜ水野忠央が幕府に接近し、幕府史料の収集・筆写活動をするに至ったのかを解明するため、特に紀州10代藩主徳川治宝と水野忠央との関係に注目しながら、『南紀徳川史』などの関係史料を用いて検討を進めた。その結果、治宝の存命中、忠央は付家老として藩政に影響力を行使できない状況に置かれていたことが明らかとなった。すなわち、先例や伝統を重視する忠央は幕府の後ろ盾を得て治宝の藩政に圧力を掛けようとし、親族にあたる老中水野忠邦に接近し、その古文書・古記録編纂に影響を受け、『丹鶴叢書』の刊行や幕府史料の収集に至ったのではないかと考えられる。今後さらに考察を深めたい。 (3)当史料群に収録されている個別史料の史料学的検討 昨年度に引き続き本年度も幕府文書論・アーカイブズ論の構築をめざし、主に『丹鶴城旧蔵幕府史料』を素材として、老中奉書・御内書・伺・届などの文書の検討を進めた。今後、研究代表者・研究分担者・研究協力者それぞれの個別研究を集積し、その成果をまとめていきたい。
|