本研究は、信濃善光寺門前水茶屋の経営文書である「島田屋文書」を中心に、その整理・公開作業、分析をおこなうとともに、近世~近代の遊郭における、遊郭経営・遊女・男性遊客の実態を明らかにすることを目的とする。また、本史料をもとに、周辺地域の史料調査を合わせることで、広域的な流動性についても検証をおこなうとともに、その他の地域における同種の資料の調査もおこなう。 1、上記「島田屋文書」の整理作業をすすめ、その近世部分についての翻刻の(5)を『京都橘大学大学院研究論集』第10号に掲載し、近世部分の翻刻は完了した。また、近代部分についても目録作成・写真撮影を完了した 2、「島田屋文書」の関連史料として、昨年度、善光寺門前権堂村の名主永井家の文書を入手したが、目録作成をおこない、「茶屋仲間掟」などの新史料を発見した。 3、他地域の同種の遊郭資料の調査の一つとして、昨年度から引き続き長崎丸山遊郭の調査を長崎歴史文化博物館などにおいておこない、その成果を「混血児追放令と異人遊郭の成立」および「長崎丸山遊郭の『遊女屋宿泊人帳』覚書」と題して論文を発表した。いずれも男性遊客の問題をはじめて組み込んだ遊郭論としての意義を有する。 4、他地域調査の二つ目として、博多柳町遊郭および下関稲荷町遊郭の調査をおこなった。 5、「島田屋文書」関係での研究成果の発表には至らなかったが、2012年7月に京都橘大学女性歴史研究所シンポジウムにおいて報告をおこなうことが確定している。
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