本研究の目的は、日本近世武家社会における奥向構造の研究を進めるうえでの研究環境を整えるために、奥向構造にかかわる史料の史料学的研究を進めるとともに、史料を翻刻・紹介して史料利用環境の共有化をはかることを目的とするものである。 初年度計画として、松代真田家文書の女中奉公人請状34点の原稿作成、および原本校正、史料学的分析をおこない、論文1本を執筆するとともに初年度に関連史料を収集することができた。 次に、彦根井伊家文書の老女奉文および諸事留約30点の史料翻刻は膨大な量となるため、計画の見直しをすることにした。そのため、次年度の計画に予定していた鳥取池田家の女中奉行日記1冊の史料学的分析および史料翻刻原稿の作成を優先的に進め、400字詰原稿用紙約900枚の原稿を大学院生の協力のもとに作成することができ、3月には原本校正および再度写真撮影のため現地調査に赴いた。その際に関連する「江戸御部屋日記」の収集もあわせておこなった。 萩毛利家の女性消息319点は予想以上に史料の読解が難しかったため、本年度は原本校正のための出張を延期し、かわりに鳥取池田家関連の奥向史料を収集するため、名古屋および金沢での調査を進めた。
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