現在、全国で保存されている郡役所文書の現地調査を、徳島県・山口県下関市・鳥取県・兵庫県・大阪府・京都府・奈良県・滋賀県・愛知県・三重県・新潟県の各公文書館・図書館・県庁などで実施し、府県ごとに郡役所文書の管理形態を検討した。以前に調査した分を含め、今年度は熊本県・宮崎県・奈良県の郡役所文書の特質についてとりまとめ、研究論文として『地方史研究』『別府大学紀要』『別府大学大学院紀要』に発表した。さらに山口県についてまとめているところである。 「最終年度であるので、その研究成果報告書『郡役所文書の基礎的研究』を刊行した。内容はI「研究経過」、II「研究成果」の2章に分け、IIの1節「郡役所文書情報の集約」で64機関に所蔵されていることを確認した全国の郡役所文書情報を所蔵機関ごとに紹介した。郡役所文書は大正15年に郡役所廃絶後廃棄され、ほとんど保存されていないといわれていたが、64件の保存を確認し、その保存形態も把握できたことは今後の研究の基礎をなると思われる。後IIの2節「大正六年各府県郡役所庶務規程-全国の郡役所処務規程-」で郡役所文書管理についての群馬県立文書館に保存されていた、大正六年段階の全国の郡役所事務執行についての規程類を大学院生の協力を得て翻刻して紹介した。郡役所文書の管理形態を横断的に検討できる基本的史料であり、府県、市町村の公文書管理にも通底する特質を解明することが可能となる。
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