イスラーム史の年代比定の有力な素材であるアラビア文字紀年銘の利用法を確立するべく、年代計算のためのウェブサイトを構築して広く研究者の便宜を図るという研究目的を遂行するため、自作のPer1スクリプトによるプログラムのソース・コードを、同僚の所員の助けによりJavaスクリプト化した。これによってアラビア文字の入力が直接できない環境でもウェブ上でアラビア文字列の入力が可能となったほか、より高速に動作するようになったおかげで、実用化に向けて大きく前進することができた。これを研究代表者の所属するアジア・アフリカ言語文化研究所のウェブサイト上で近日中に公開する予定である。 一方、オスマン朝において作成された紀年銘テキストを収集してデータベース化するために、18世紀末のイスタンブルの全モスクの来歴を記したアイヴァンサライー(Ayvansarayi)著『モスクの花園(Hadikatu'l-Cevami)』全2巻中の第1巻(イスタンブルのヨーロッパ側の半島部分を扱う)に収録されている紀年銘テキストの入力が完了した。史料のテキストに記されている年代の数値データと、アラビア文字紀年銘の計算から得られる年代結果データとの対比を行なった。 また海外研究協力者であるハティージェ・アイヌル教授(Prof.Dr.Hatice Aynur)(イスタンブル・シェヒル大学)と打ち合わせを行い、オスマン朝下で作られた墓碑銘を体系的に収集する、より大きな共同プロジェクトを実現させるため、上記の計算プログラムを提供することにより、墓碑に記されたアラビア文字紀年銘の分析で協力していくことで合意した。 また引き続きオスマン朝下で作成されたアラビア文字紀年銘に与えたペルシア語韻文学の影響を明らかにするため、ペルシア語韻文によるアラビア文字紀年銘に関する文献の調査をイランにおいて行なった。
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