研究課題/領域番号 |
21520713
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 久美子 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (80252203)
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キーワード | シプソンパンナー / 西双版納 / 写本 / タイ族 / 東南アジア史 |
研究概要 |
本研究は、現在の中国雲南省西双版納〓族自治州に1950年まで存在したシプソンパンナーというタイ族の政治統合の性格を、これまでほとんど用いられてこなかったタイ語写本を史料として再検討することを目的としたものである。 平成23年7月にタイのバンコクで開かれた国際タイ研究会議においては、本研究において翻訳した写本を主たる史料として、シプソンパンナーにおける王権と社会との関わりを王に対する貢納・〓役のあり方から論じた研究発表をおこなった。また、それをもとに執筆した論文を、平成24年3月発行のJournal of the School of Letters, Nagoya Universityに発表した。その概要は以下のようである。 ・写本には、王の直轄国であるムンツェンフンのタイ族からばかりでなく、他のムンの人々や非タイ族の山地民からの貢納・徭役の事例が多く記されていた。 ・しかし、王権側は、タイ族・非タイ族を区別した上で貢納と徭役を課していたわけではなく、貢納と徭役を課す対象を一括して「パイ・ムン」と呼んでいた。 ・王権側は貢納と径役の違いも区別せず、一括して「グアット・ツァオ」と呼んでいた。 ・課税対象単位として最も事例が多かったのは村落(バーン)であった。タイ族に対する課税の単位は村落のみであった。村落の次に事例数が多いのはコンkawnであり、それは山地民の課税単位であった。 論文執筆後の平成24年1月には、「王と王に任命された大臣・官僚との関係」を示す部分を含むタイ語写本の翻字・翻訳を、研究協力者の協力を得ておこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「王と王に任命された大臣・官僚との関係」を示す部分を含むタイ語写本の翻字・翻訳は、当初の予定どおり平成23年度中におこなうことができたものの、国際会議発表準備や論文執筆に時間がかかってしまったために翻字・翻訳に取り掛かるのが遅くなり、翻訳後に詳細な検討・分析をする時間的余裕はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
・平成24年度が本研究計画の最終年度であるため、平成23年度までにおこなった写本の翻字・翻訳の再確認をおこない、それを公表して関連研究者が研究に使用できるようにしたい。 ・平成22年度に課題とした「王の直轄国ムンツェンフンとシプソンパンナー内のその他の小国(ムン)との関係」に関しては、平成22年度にはムンツェンフンから見たその他のムンの位置づけについて議論することができた。平成24年度においては、その逆の方向、すなわち地方のムンにとってムンツェンフンがどのような存在であったかについて考察したい。
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