研究課題/領域番号 |
21520715
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三田 昌彦 名古屋大学, 文学研究科, 助教 (30262827)
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キーワード | インド / 中世史 / 刻文 / 近世史 / ラージャスターン / グジャラート / 城郭 / 地方語 |
研究概要 |
本年度は、10~16世紀の国家とヴァナキュラリズムを探る上で最も重要となる、銅板文書をはじめとする刻文史料の蒐集・整理について、これまでのようにラージャスターンではなく、グジャラートに地域を移して調査を行った。また、同時期に大きな変化を見せる王都と城郭構造について、現段階での仮説を交えながら研究報告を行った。 ・刻文史料収集は、3月に3週間ほどグジャラートを訪れ、主に政府系博物館に所蔵されている銅板文書および石碑、合わせておよそ100点ほど写真撮影を行った。なお、今回の刻文はほとんどがサンスクリット語刻文であり、地方語のものはわずかしか蒐集できなかった。それらはこれまで作成してきたラージャスターン・グジャラート刻文データベースに加えた。また、バローダー博物館には多数の銅板文書が保管されていることが判明したので、次年度の調査対象にする予定である。 ・10月の日本南アジア学会大会において「ラージャスターン中近世の王都と城郭」と題した研究報告を行った。8~13世紀、14~15世紀、16~17世紀の3段階に分けて、ラージャスターンの王都が、当初の大規模山上城砦から、最終的には市街区全体を城壁で囲う城郭都市へと転換していくプロセスを提示した。また5月には「インド文化の会」において「インド中世の城砦と城郭都市」と題して、一般向けに講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
15世紀以降の地方語の刻文が期待していたよりも蒐集できていないが、その理由はラージャスターン州政府が銅板文書の撮影を許可しない点にある。しかし、その一方で、当該期の転換に関する重要な成果として、城郭構造の変遷がかなり具体化できている。
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今後の研究の推進方策 |
地方語の銅板文書の分析が遅れているので、今後はそれを集中的に行う。写真撮影はかなり難しいので、碑文集や学術雑誌にすでにテキスト化されている刻文を中心に、分析を進めていく。碑文についてはこれまでと同様に、グジャラートを中心に写真撮影を進め、データベースを作成していく。
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