研究課題/領域番号 |
21520715
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三田 昌彦 名古屋大学, 文学研究科, 助教 (30262827)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インド / 中世史 / 刻文 / 近世史 / ラージャスターン / グジャラート / 城郭 / 地方語 |
研究概要 |
本年度は、以下の通り、10~16世紀の国家とヴァナキュラリズムを探る上で一つの柱となっている城郭都市の問題について現地調査を行うとともに、本研究課題に関わる論文作成と学会報告を行った。 ・3月にラージャスターン東部を訪れ、11世紀ごろ創建されたと見られる山上城塞都市Bayanaと16世紀に建設された山麓城郭都市Bhangarhの簡単な実測調査を行った。前者はJalorなどと同タイプの、中世初期に典型的に見られる巨大な山上城砦(約1.8×0.7km)で、後者はBundiなどと同タイプの、16・17世紀に建設された城郭都市の典型と言いうる遺跡であり、両時代の違いを明瞭に見せるサンプルとして、本研究には重要な事例であることが判明した。 ・6月には名古屋歴史科学研究会大会(テーマ:アジアの普遍宗教と王権)において、「10-12世紀インドの地域王権とチャクラヴァルティン」と題する研究報告を行い、10-12世紀の王権が「地域国家」を事実上建設しながらも、実際には全インドの統王(チャクラヴァルティン)となることを目指すことで正当化される王権であることを明らかにし、15世紀以降の王権とは性格が異なることを示した。 ・3月に刊行された論文「中世ユーラシア世界の中の南アジア――地政学的構造から見た帝国と交易ネットワーク」では、10-12世紀の「地域国家」建設がユーラシアレベルで見られた乾燥・半乾燥地帯の活性化と同様の動きであることを示し、乾燥移動民地帯と定着農耕地帯との境域国家建設として理解する方向を示した。これもまた、15世紀以降の地域国家建設の動きとは異なる性格の動きとして、14・15世紀の転換を考える材料となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
15世紀以降の地方語の刻文が期待していたよりも蒐集できていないが、その理由はラージャスターン州政府が銅板文書の撮影を許可しない点にある。しかし、その一方で、当該期の転換に関する今年度の重要な研究成果として、13世紀以前の研究が大いに進展し、その時代の「地域国家」の超地域性(サンスクリット文化とサーマンタ体制)がかなり明確になってきた。またこうした14世紀の転換をユーラシアレベルの動きと連関させて理解できるようになったことも、研究の大きな進展の一つであり、これまでのところ、研究の目的に沿って概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
地方語の銅板文書の分析が遅れているので、今後はそれを集中的に行う。また最終年度であるので、これまでの成果を原稿化あるいは学会報告などを通して公表し、研究目的を達成させる。
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