本年度は以下の作業を行った。 1文献研究:アラビア語地理書におけるアフガニスタン近辺の記述から地名情報を収集し、あわせてこれに関する従来の研究状況を調査した。特に注目したのはイスラム時代初期においてインダス川上流地域~チベットにかけての地域がどのように認識されていたか、という点である。 2地図資料収集:新たにAfghan Information Managementが配布している10万分の1地形図を入手し、これを旧ソ連軍作成地図と比較対照した。前者は1960年代にアメリカ空軍が作成した地図に基づいているらしく、特に地名に関しては旧ソ連軍のものと差異が大きいことが確認できた。主にこれら二点の地図情報から、試みに19世紀イギリス軍が報告するバーミヤーン西方からワルダク、ガズニ方面へと抜けるルートの同定を試み、その成果の一端を発表した。 3ウィーン大学およびオーストリア国立科学アカデミーとの従来の共同研究を継続し、国際ワークショップに て研究報告を行った。同ワークショップにおいては、また上記(1)に関わる報告もあり、日本とヨーロッパ における研究成果の比較と統合を行うことができた。 また、これらの作業を通じて得た情報を、所属機関において組織する共同研究班「南アジア北辺地域における文化交流の諸相」の活動の中で、報告し議論を行った。
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