研究課題/領域番号 |
21520720
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
植村 泰夫 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40127056)
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研究分担者 |
藤田 英里 広島市立大学, 国際学部, 研究員 (70516012)
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キーワード | 船腹不足 / 船舶の接収 / 対アジア貿易 / マレー半島 / 貿易構造 / 第一次世界大戦 / インドネシア / ランプン |
研究概要 |
研究代表者の本年度の当初計画は、(1)第一次世界大戦期インドネシアの貿易構造変化の特徴の解明、(2)スラバヤ糖業の栽培縮小と食糧増産計画に関する検討、(3)農村工業発展に関する検討、の3点だったが、大幅な変更を行って専ら当該時期のインドネシアの船舶就航問題に集中して取り組むことになった。これは、昨年夏のオランダにおける史料調査の中で、計254港に及ぶ詳細な船舶就航統計を入手することができたからである。このデータを中心にした検討から、以下の点が明らかになった。(1)当該時期のインドネシアの交易を担った主力はオランダ、蘭領インド、英国船籍の容量が300m3超の蒸気船である、(2)大戦勃発とともに外国航路では上記の船種を中心に船腹不足が発生して17~18年に最も激しかった。内海航路では16年頃から始まり17~18年が激しかったが外国航路ほどではなかった。(3)船腹不足の最大の要因は、英米による船舶の接収だった。(4)この結果、ヨーロッパと蘭領インドの間の貿易が激減するが、それは対アジア、対米貿易の増加で埋め合わされた。(5)船舶の出入港状況には極めて大きな地域差があり、大規模輸出港で船腹不足が深刻であるのに対して、マレー半島に近接する港でほそれは見られない。このことは、シンガポールなど近隣諸港との交易がこの時期に発展したことを示唆している。これらの成果は、今後、インドネシアの貿易構造を地域差を踏まえて再検討し、第一次世界大戦の地域社会に対する影響をいくつかの類型に分けて論述するための基礎になるものである。 また研究分担者は、引き続いて当該時期のランプン社会の変容過程についての検討を進めている。
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