研究課題
1, 資料の収集について平成22年度においては、前年度に引き続いて、国内外の図書館で桑原隲蔵『中等東洋史』の中国語諸版本について調査を行った。中国では北京図書館、南京図書館、上海図書館、日本では京都大学文学部附属図書館・桑原文庫、広島大学附属図書館、岐阜大学附属図書館でそれぞれ資料を収集した。なかでも、これまでに知られていない桑原隣蔵『中等東洋史』の訳本・張仁侃閲『東洋史要原本』(未刊)を北京図書館(古籍部)で発見したことが特筆すべきである。そのほか、南京図書館、上海図書館で清末期に出版された中国史、東洋史の貴重な教科書を閲覧・複写(一部)することができた。2, 資料の分析と研究成果(1)21年度、22年度に入手した桑原隲蔵『中等東洋史』の中国語訳諸版本の分析、および同時代日本・中国で出版された桑原隲蔵東洋史教科書以外の東洋史教科書、中国史教科書との比較分析を行った。その成果は「桑原隣蔵東洋史教科書とその漢訳テクスト-『東亜史課本』との比較分析を中心に」と題した学術論文にまとめ、『愛知県立大学外国語学部紀要』(地域研究・国際学編)第43号、2011年3月、pp.61-82)に掲載されている。(2)桑原騰蔵『中等東洋史』を明治中期支那史・東洋史教科書の系譜のなかで考察し、同時代日本の東洋史教科書における『中等東洋史』の位置づけについて分析した。その成果は「書写中国-明治時期日本的支那史・東洋史教科書的中国表述」と題した学術論文にまとめ、黄東蘭編『再生産的近代知識』(『新史学』第4巻、中華書局、2010年12月)に収録されている。(3)桑原隲蔵『中等東洋史』とその漢訳本の一つである陳慶年編『中国歴史教科書』の三つの版本とを比較分析し、その成果を「「東洋史」から「中国史」へ-桑原隲蔵『中等東洋史』の漢訳テクストを通して」と題してアジア教育史学会2010年度例会(2011年1月29日、国士舘大学にて)で報告した。今年度中に論文にまとめ、学術誌に投稿する予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
愛知県立大学外国語学部紀要(地域研究・国際学編)
巻: 第43号 ページ: 61-82
Frontiers of History in China
巻: Vol.6, NO.1 ページ: 95-116