研究概要 |
本研究は、近代以降、イランにおける地主=農民関係がどのように変容したかを明らかにするための基礎研究である。具体的な対象地域としては、アルダラーン家などクルド系諸侯が統治していたイラン西部地域を取り上げる。 平成24年度の補助金の一部を翌年度に繰越を行ったので、以下では平成24年度と25年度の業績を報告する。 平成24年度には、「シャー・タフマースプの対クルド政策」と題する論文をStudia Iranica, 41号に発表して、アルダラーン家を含むクルド系諸侯に対し、サファヴィー朝第2代君主タフマースプがどのように政治統合を図ったかを解明した。平成24年8月には、トルコのイスタンブルで開かれた国際イラン学会第9回大会で「オスマン検地帳による18世紀初頭イランにおける定住パターンと宗教的構成」と題する口頭発表を行い、当時の都市と農村の規模や両者の関係について論じた。 平成25年9月に2週間ほどイランに滞在し、サナンダジュにある「コルデスターン文書館」で文書資料の収集にあたるとともに、アルダラーン地方各地を回り、その地理的条件を確認した。同じく9月には、「後期サファヴィー朝有力家系の戦略的資産形成:ザンギャネ一族の「財産目録」を手がかりに」と題する論文を発表し、一クルド系名家が18世紀初頭の時点でどれほどの村落をどのような形で所有していたのかを明らかにした。平成25年11月30日には、東京で開かれた国際会議「サファヴィー朝イランを位置づける」に出席し、16世紀から19世紀にかけてアルダラーン家と歴代イラン宮廷との関係がどのように変容したのかをたどり、アルダラーン家のイランへの政治統合のプロセスを提示した。
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