研究概要 |
平成21年度の研究は,ルクセンブルク朝後期の時代(14世紀夫から15世紀前半)の政治情勢研究を中心に行った。選帝侯会議や,国王ヴェンツェルの廃位,新国王ループレヒト・フォン・デア・プファルツの選出と苦闘,そしてジギスムントの登場による皇帝権の実体的復興への努力,そしてその後を継ぐハプスブルク家のアルブレヒト2世の選挙という約50年間のタイムスパンの中での一連の政治過程を,参考文献・史料の確定を行いつつ,見通しを立てることができた。 特にアルブレヒト2世の選挙については,当時の西欧情勢との密接な関連を観るために,ブルゴーニュ公のドイツ国王位への野心との関連で,ブルゴーニュ,ドイツ両勢力に大きく利害を有する中間介在勢力(独仏境界地域の在地貴族・諸侯)の関与・仲介という政治行動を,文献の読解を通じて検証することができた。その成果は平戌22年度に論文として発表する予定である(現在は原稿の段階)。その他に既執筆の著書原稿『神聖ローマ帝国』については部分改訂を行い,次年度の刊行の最終準備を行った。 また,中世末期(14末から15世紀末)のドイツ帝国化した神聖ローマとドイツ王=皇帝権の理念と現実の相克を究明することとなる次年度への準備として,バーゼル公会議時代の教会側論客であったニコラウス・クザーヌスの教会と帝国の改革への提言及びその根底にある彼の政冶思想・法的権力論へのアプローチに着手し,彼の『カトリック調和論』における権力論の読解を始めた。 これにより,コンスタンツ公会議により紅葉した公会議主義を,帝国の下からの改革につなげようとする『ジギスムントの改革』(1438年頃)に関するさらなる検討の必要性を生じさせた。
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