本研究の目的は、アイルランドおよびスコットランド出身のカトリック信徒が、近世北西ヨーロッパ経済の発展に果たした役割を明らかにすることである。 平成22年度は、本研究の2年目にあたり、平成21年度後半から精査してきた一次史料「船舶艤装申告書」を『船舶艤装申告書一覧 1694~1744』として出版した。 これまでの研究では、国際商業都市フランス・ナントの飛躍的発展の時期は、18世紀後半と理解され、史料の綱羅的な整理と検証は、もっぱらこの時期に限定されてきた。こうした研究史に対して、本研究の成果のひとつとなる『船舶艤装申告書一覧 1694~1744』は、フランス人研究者によっても達成されていない史料データの整理・編纂という点で、重要な意義をもつ。 また平成22年度は、亡命ジャコバイが構成する宮廷について学会発表する機会をももったので、フランス王国政府とジャコバイトとの関係、宮廷を構成する具体的なメンバーと彼らがもつ特質などを考察できた。これは、本研究の目的である「ジャコバイトによる経済的活動の発展」を理解するために必要な要素-彼らの政治的動向-を把握する作業になったので、本研究の深化に大きな意味をもたらす。 以上のように平成22年度に達成した成果は、翌年度以降における研究の進展を保証すると考える。
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