研究課題/領域番号 |
21520739
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
下里 俊行 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 教授 (80262393)
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キーワード | ロシア正教 / 護教論 / 反キリスト教 / ナデージュヂン / ゴルビンスキイ / プラトン / 教会教父 / 神の国 |
研究概要 |
本研究では、(1)ロシア正教の「護教論」文献の再発見とその内容分析、(2)護教論において論駁対象となっている反キリスト教・反正教的思想の読解、(3)ロシア正教の「護教論」とその論敵との間の論点・相違点・共通点の抽出することを研究目的としている。本年度は、(1)ロシア正教の護教論文献の主題別文献一覧(ロシア語文献限定)を作成し、その一部の内容面での分析をおこなった。(2)護教論の論駁対象として、カントの不可知論、スペンサーの不可知論をとりあげ、正教教義学の観点からの批判の論拠を分析した。(3)ロシア正教の護教論形成の前提条件として、19世紀初頭までに正教神学教育において主流哲学であったライプニッツ=ヴォルフ派の形而上学体系の分析と、それに対する批判、およびプラトニズムによる正教的宗教哲学の再構築の試みを19世紀30年代のニコライ・ナデージュヂンの論文を中心に分析し、「神の似姿」という人間観と「最高善としての神への接近」という歴史観をロシア・プラトニズム的キリスト教に固有の論点として析出した。今後は、この論点が40年代以降、20世紀初頭までにどのように変化するのか、しないのか、同時代の西欧思想やローマ・カトリック、プロテスタントの思想動向との関連を視野に入れて分析することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では(1)ロシア正教の護教論文献の調査分析、(2)論駁対象の分析、(3)護教論をめぐる論点抽出をおこなう予定であった。結果として、(1)および(2)の分野に関してある程度の研究成果が出ており、(3)の課題において予想外に長期的な見通しをもつことができる研究成果を得ることができた。従って総合的に判断したとき、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、本計画の最終年度にあたるため19世紀におけるロシア正教護教論に関する文献一覧を作成し、そこでの主要な論駁対象、および論点を総括的に概観する。とりわけ、護教論と当時の非教会的な宗教思潮・運動との関連を視野に入れるとともに、関連するロシア・欧米での先行研究の動向との関連性を明確にする。同時に、本研究は、基礎的研究であることを念頭に置き、とりわけ、帝国文化論との関係を重視しつつ今後の発展的な研究の方向性についても検討する。
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