本年度の研究業績として、論文「1941年リーガのユダヤ人とラトヴィア人-ラトヴィア人のホロコースト協力をめぐって」(『金沢大学経済論集』第30巻に掲載、前篇・後篇あわせて総ページ数54ページ)を執筆した。既発表のポーランド、ウクライナ、リトアニアのホロコーストに関する著書および論文と本論文によって、本科学研究費による研究の前史をなす東ヨーロッパのユダヤ人社会の消滅過程を明らかにする作業をほぼ終了することができた。 本科学研究費による研究に関しては、本年度は、研究計画書に掲げた三つの研究課題のうち、とくに(2)の「ポーランド・ユダヤ人難民問題」に関して、文献・史料収集を行った。まず10月末から11月はじめの海外出張で、この問題の専門研究者であるインスブルック大学(オーストリア)のアルプリヒ教授を訪問し、教授の研究所が所蔵するYIVOのマイクロフィルム(オーストリアにおけるユダヤ人DP問題関連)を閲覧するはずであったが、事前に十分なコンタクトをとっていたにもかかわらず、現地でマイクロフィルムの紛失が明らかになるという信じがたい不運に見舞われた。しかし、その代わりとして、教授が所蔵するアメリカの公文書館史料の提供を得ることができた。 次に、3月末、計画では22年度に予定していたエルサレム(イスラエル)に海外出張し、ユダヤ人DP関係史料の所在状況について、シオニスト中央文書館およびヤドヴァシェムの文書館で予備調査を行った。同時にエルサレム滞在中、ユダヤ民族中央歴史文書館にて、本研究の研究課題(3)の「ウィーンにおけるホロコーストとユダヤ人ゲマインデ執行部のかかわり」に関連する史料も収集することができた。
|