研究課題/領域番号 |
21520741
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
野村 真理 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20164741)
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キーワード | ユダヤ人 / ウィーン |
研究概要 |
研究計画に掲げた三つの研究課題のうち、(2)の「ポーランド・ユダヤ人難民問題」については、平成22年度科学研究費繰り越し分による海外渡航(2011年9月3日から24日まで)で史料・資料収集をほぼ終了し、11月に著書の原稿を脱稿した。本稿は、金沢大学の競争的研究経費「重点戦略経費・人文社会科学系学術図書出版助成(平成24年度刊行分)」に応募した結果、採択が決定し、平成24年度中に図書として刊行される予定である。(タイトル『約束の土地は何処か-ホロコースト後のユダヤ人DP問題研究序説』) 研究課題(1)「ウィーンにおけるホロコーストとユダヤ人ゲマインデ執行部のかかわりの検証」については、これまでエルサレムの文書館に行かなければ閲覧できなかったホロコースト期(1938~45年)のユダヤ人ゲマインデの内部文書がマイクロ・フィルム化され、ウィーンのユダヤ人ゲマインデ文書館で閲覧可能になったことにより、本年度9月からの長期在外研究期間中、それらを集中的に読むことができた。日本では、このゲマインデ文書を用いた本格的研究は存在せず、本研究の推進上、きわめて大きな収穫であった。また、オーストリア国立図書館がデータベースとして所蔵しているWiener Libraryのホロコースト生存者による証言のうち、ウィーンにかかわる証言も収集ができた。 研究課題(3)「戦後ウィーンの反ユダヤ主義とユダヤ人の生活再建およびユダヤ人犠牲者補償問題」については、戦後ウィーンのユダヤ人ゲマインデの内部文書が非公開扱いとなっているため、同じく本年度9月からの長期在外研究期間中、オーストリア国立図書館およびユダヤ人ゲマインデ図書館にて、戦後、ユダヤ人各派が発行した新聞・雑誌記事、ホロコースト生存者による回想録等を中心に史料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の三つの研究課題のうち、(2)のポーランド・ユダヤ人難民問題についてはかなり順調に研究が進み、2012年度中にこのテーマに関して単独で小著を刊行する予定である。課題(1)ウィーンにおけるホロコーストとユダヤ人ゲマインデ執行部のかかわりの検証については、2011年度9月からの長期在外研究期間中、ウィーンの文書館にて、研究に必要な史料を集中的に読むことができた。課題(3)の戦後ウィーンのユダヤ人の状況については、現在なお、史料・資料を調査・収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
上記11で述べたように、本研究の三つの研究課題のうち、課題(2)については、ほぼ研究を終了し、課題(1)については、必要な史料・資料を入手した。2012年度は、課題(1)について、論文をまとめたい。 問題は課題(3)「戦後ウィーンの反ユダヤ主義とユダヤ人の生活再建およびユダヤ人犠牲者補償問題」である。ウィーンのユダヤ人ゲマインデ文書館は、戦後のゲマインデ文書を公開していないため、使える同時代史料は、戦後ユダヤ人の各派によって発行された新聞・雑誌記事等に限定される。戦後ユダヤ人の状況について可能なかぎり具体的な像を描き出すため、これら記事の叙述をユダヤ人の手になる回想録等で補い、またホロコースト第2世代を対象とする聞き取り調査も実施したい。
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