法廷弁論家であり、また前4世紀後半のアテナイ政治を主導する政治家の1人でもあったリュクルゴスに焦点をあて、ヘレニズムへの転換期における公と私の関係性について検討した。とりわけ、リュクルゴスの政策における公私の関係性を理解するために(1)エイサンゲリア(弾劾裁判)の多用、(2)私的復讐と公的刑罰の区別の2点について分析し、市民生活のなかの公共的要素をリュクルゴスが重視していたことを明らかにした。そのポリス共同体イメージは、アテナイ社会に伝統的な互酬的価値観のもとに、アプラグモシュネ(消極主義)的な市民像を取り込んだものとして理解できる。
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