研究課題/領域番号 |
21520748
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐久間 亮 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (30231335)
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キーワード | 植民地支配 / 野生動物保護 / 国立公園 / global environmentalism |
研究概要 |
本研究は、イギリス帝国を基盤として築き上げられた野生動物・自然保護の国際的ネットワークの全体像に迫り、現代のglobal environnmentalismの歴史的起源の一つを明らかにしようとするものである。そのために、アジア各地に及んだ自然保護団体の人的ネットワークの実態を明らかにし、さらにはアフリカとアジアの経験の比較検討をおこなうことを目的としている。23年度においては英領マラヤに焦点を絞った研究をおこなった。 1)英領マラヤ(海峡植民地、連合州)の経済、社会構造、統治システムに関する基礎文献、史料の分析、情報の蓄積をおこなった。 2)パハンにおける主要産業であったゴム・プランテーションおよびゴム産業協会(国立公園設営に対する最大の反対勢力)に関する史料の分析をおこなった。 3)ジョージ5世王国立公園の設立時の、英本国植民地省と連合州統監、知事、諸圧力団体などの書簡等の史料の分析をおこなった。 4)ロンドンに拠点をおく野生動物保護団体(Society for the Preservation of Fauna of Empire)の国際的ネットワークの形成、とりわけ、英領マラヤ、インドなどの関連団体についての機関誌等の史料分析をおこなった。 これらの研究を通じて、ジョージ5世王国立公園形成にいたるプロセスが明らかになってきたと同時に、この政策立案過程に上記の関連団体がどのようにコミットしたのかも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の21年度で、マレーシアでの史料収集が順調に進んだこと、また22年度の国内図書館等での史料収集も予定どおりすすんだことで、23年度は収集した史料の分類、データベース化を中心とした作業を順調に進めることができた。ただ、マレーシアでの保護政策の展開に対する抵抗運動についての研究も進める予定であったが、現地住民の反応について、一部の圧力団体の史料しか入手できず、この点が予定通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
英領マラヤ、インドにおける1920年代から30年代の保護政策の実態がこれまでの研究から明らかになってきたので、今後は英領アフリカ、とりわけタンガニーカ植民地における保護政策との比較研究と、1930年代以降の保護政策進展の中で生じた保護主義のイデオロギーそのものの転換、それに伴う野生動物保護団体の国際的ネットワークの変容、そしてこれらが第二次世界大戦以降の、国際的な野生動物保護保護団体の形成にいかなる影響を及ぼしていくことになったかなどを明らかにしていきたい。
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