研究概要 |
平成23年度は,本研究プロジェクトの母体である消費文化史研究会で共同研究を進めてきた眞嶋(代表者),草光,大石,新井,菅,大橋(分担者),新,田中(協力者)が,それぞれ論文および単行本の執筆を進める一方で,国際シンポジウムの準備と開催をおこなった.特にそれぞれ研究成果の一部を,国際シンポジウムにおける報告と,英文のプロシーディングス論文という二本立ての形式で,広く国内外に発表できるよう、入念に時間をかけて準備をしたため,日本の読者を想定した単行本シリーズの執筆にかける時間がやや不足しがちになってしまったが,国際シンポジウムでの議論の中では,本研究プロジェクトをさらに進展させる新たな視点や研究結果も見いだされたため,単行本の最終稿を書き上げる中でも役立っているといえよう。上記共同研究者の具体的な発表内容はとしては,眞嶋(代表者)は,19世紀イギリスとフランスのファッション産業の在り方を産業革命という転換点を重視して比較分析し,草光(分担者)は,ルネッサンス・イタリアに端を発する植物の「消費」における植物学の重要性を指摘し,大石(分担者)は,18世紀イギリスの感受性とチャリティと消費文化の関係性を,文学的表象の中において歴史的文脈と比較考察した。また,菅(分担者)は,産業革命の結果としての屋内での植物観賞について,特に大英博覧会開催時の論議に注目し,新井(分担者)は,19世紀海浜リゾートにおける観光の発展に関して文学的資料を用いて議論し,大橋(分担者)は,18世紀における消費・流通の形態として重要なオークションについて,具体的な担い手を綿密な資料分析によって洗い出した。国際シンポジウムには,消費文化史の先駆者で国際的な権威であるJohn Brewer(米国カリフォルニア工科大学),Avner Offer(英国オクスフォード大学),John Styles(ハートフォードシャ大学)を招聘講演者として招き,また国内外の一般公募でも非常に高いレベルの研究者が参集したため,質の高い学術的な議論の中で,開かれた形で共同研究の研究成果を問い直し,幅広い意見交換を行うことができた。
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