本研究では、急速に都市化した近現代イギリスにおける「緑化」をめぐる人びとの思考の変化が、都市という近代的な住環境にどのように反映され表象されているかを検討し、19世紀から20世紀初期のイギリス人の自然環境に対する感受性の変遷を浮き彫りにするという全体構想の下に、都市生活者に最も身近であった(人造植物も含む)観用植物や植物デザインなどを利用した私的空間の緑化(「緑」の配置、栽培)がこの時期に急速に発展した経緯、および園芸の趣味が貴族の奢侈から大衆の健全な「合理的余暇」や精神的な慰めへとコンテクストを広げていった過程を探ることを目指した。 平成24年度は、もうすこし掘り下げる必要が会ったデザイン運動の動きと植物の消費文化の関連性を分析するための資料を読み進めた(百貨店や小売店のパンフレットや活動記録、インテリア関連の業界雑誌、家庭雑誌である)。そのためにロンドンで資料収集を行い、National Art Libraryに雑誌やカタログのイギリス最大のコレクションがあるため、その検証をおこなった。また、関連資料を持つArchives of Art and Designにても資料を閲覧した。また、できるだけ研究の総括としての成果発表のための原稿を書き進めた。
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