研究課題
本年度は、欧米のディアスポラ社会からイスラエルへどのような経路で、どれだけの規模の金が動いたのかを知るために、夏に約1週間ニューヨークで、年末から年始にかけて約2週間、ドイツとフランスで、様々な文書館、図書館、研究機関を訪れ、史料状況の確認を行った。その結果分かったのはアメリカの主たるユダヤ系文書館では、イスラエル支援のためにアメリカのユダヤ人社会からねん出された寄付金の額やその動きを示す史料は、入手が困難だということであった。中核的な寄付金収集団体である「ユダヤ統一アピール」の史料を所有すると二次資料に記されていた文書館にはこれが存在せず、団体から具体的配分を受ける「イスラエル統一アピール」は史料を一般に公開していないと回答があった。逆に、寄付金を受けた団体がこれをいかに使用したかという観点からも史料を探したが、短期間の滞在での収集は到底不可能であることが分かった。したがって、こうした史料は金が使われた現場であるイスラエルにおいて集めるのが最も効果的と結論された。次に、ヨーロッパでの状況だが、今回は主にフランス国内の文書館を訪ねたが、探しているような史料は「世界イスラエル連盟」文書館でも、「アラブ世界研究所」の図書館でも、見当たらなかった。私的なユダヤ人団体の史料状況が確認できたということは、初歩的ではあるが次年度の研究計画を立てる上で大きな意味を持つ。また海外での史料収集の合間に関連する二次文献を読み進め、研究の大きな枠組みを具体的に描けるようになったのは、本年度の大きな成果と言える。
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World History Studies and World History Education : The Proceedings of the First Congress of the Asian Association of World Historians (CD-ROM)
学習院女子大学紀要 第12号
ページ: 27-44