本年度は、近世フランスにおける海洋世界の実態について、かなりの史料を収集することができ、今後の研究の進展に資するところが大きかった。とくに外国史料調査において、海軍関係の史料をパリの防衛史料センター(パリの東郊ヴァンセンヌに所在)で閲覧したことはきわめて有益であり、また、パリ第4大学のクルーゼ教授、シャニオ教授などから適切な教示や助言を受けることもでき、フランスとイギリスを比較すると、フランスの艦船建造技術が、イギリスのそれにほぼ匹敵するものであることを知った。なお、史料調査で訪れたイタリア・ナポリの海洋博物館で、近世の地中海方面だけでなく、大西洋方面の船舶や航行技術について具体的に学ぶことができた。 研究成果としては、「近世フランスにおける難破船略奪と《漂流物取得権》」を発表したが、現在取り組んでいる海軍史について、「海軍工廠都市ロシュフォールの誕生」にまとめることができた。後者は現在印刷中で、刊行は9月の予定である。 最終年度(平成23年度)においては、本年度において得られた知見をもとに、近世フランス海軍の展開過程の概要を示すことと、沿岸島嶼部の難破船略奪の実相をより詳細に分析した論考にまとめることを課題としたい。
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