研究概要 |
本研究の目的である、海域アジアでの銭貨流通の実態を解明するため、平成22年度は中国とインドネシアにて出土銭貨の調査を行った。 中国での調査は平成22年12月に行った。北京市文物研究所に所蔵されている北京市内で調査された清代の墓に副葬されている銭貨を調査した。その結果、首都である北京では戸部寳泉局と工部寳源局で鋳造された銭貨が中心であることが分かった。これは、ベトナムやインドネシアから出土する銭貨と比較するための好個の資料となる。 インドネシアでの調査は平成23年2月に行った。調査はバンテンラマ遺跡博物館、国立博物館、東部ジャワ文化財管理事務所、考古センター・バリ事務所、バリ島等文化財管理事務所にて、収蔵されている遺跡出土の銭貨の調査を行った。調査した銭貨は中国にて鋳造されたものが主体であり、北宋・南宋・元・明・清の銭貨がほとんどであった。中でも東部ジャワのマラン出土から出土した一括出土銭1,036枚は、開元通寳から永樂通寳までの中国銭貨が埋められており、北宋銭が主体であった。その組成は中国やベトナム、日本の一括出土銭と類似していることが明らかとなり、当時銭貨が中国から流出した状況を復元するのに重要な資料となる。またバリ島で調査した銭貨には、中国の清朝銭が多く認められたが、その鋳造局は先に北京で調査したものと異なって全国各地のものが見られた。これは清朝の流通銭貨が、地域によって異なっていたことの反映と考えている。さらにバリ島では日本の寛永通寳やベトナムで鋳造された銭貨なども出土しており、中国だけでなく海域アジアの広い地域から銭貨が流入していたことが明らかとなった。 これらの成果は現在整理中であり、作業が終了した後に論文や学会発表の形で公表する予定である。
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