◎研究目的 古代の文字瓦の画像つきデータベースを構築し、歴史資料としての文字瓦の特性を明らかにする。その上で、データベースをもとに、瓦に記銘された文字と生産工程の双方の視点から、寺や官衙の造営における、瓦の生産と負担のシステム、瓦の発注主体者と寺・建立主体者の関係を解明し、窯業生産をとおして地域社会の実態に迫る。 ◎文字瓦データベースの作成 大和国(奈文研以外)253点、山城国(長岡京)136点、美濃国117点、陸奥国(福島)138点、陸奥国(宮城)197点、陸奥国(岩手)5点、越中2点、佐渡国72点、阿波国 2点、讃岐国5点、西海道諸国666点 計1593点の文字瓦のデータ処理と入力をおこない、研究成果報告書提出時までに、明治大学古代学研究所のホームページのデータベースを更新して公開する。 ◎「生産と記銘」をテーマにした公開シンポジウムの開催 文字瓦を歴史資料として位置付けるにあたり、他の記銘資料、出土史料、文献史料における記銘のあり方を考古学・文献史学の研究者を中心に、シンポジウムを6月8・9日に明治大学で開催した。発表者とタイトルは、渡辺一「須恵器生産と記銘」、大川原竜一「生産と部民」、垣中健志「『浄清所解』の基礎的研究」、奥村茂輝「官営瓦工房と記銘―奈良山における瓦生産―」、溝口優樹「大野寺土塔出土の文字瓦」、十川陽一「生産体制と記銘」、服部一隆「調庸布と記銘」、亀谷弘明「荷札木簡と記銘」、矢越葉子「経巻書写と記銘」、山路直充(研究代表者)「文字瓦からみた瓦屋」、有富純也「文字記銘と東アジア世界」、で成果提出時まで内容を刊行する。 ◎文字瓦生産による地域性の解明 多賀城創建における関東地方の文字瓦生産の対比により、多賀城創建における物品調達の解明と創建の経緯を探り、対東北政策における東国社会の実態を考察し、その成果は「日本古代の国家と王権・社会」(塙書房)で公表した。
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