奈良・平安時代の墨書・線刻遺物(土器・石製品など)として記されている語句と文章について、とくに東北地域を対象として、文献収集と資料および出土遺跡・遺構の実地調査を下記の通り行った。 [文献調査] 国立国会図書館等での文献調査・検索・複写5月22~23日東北地域の発掘調査報告書等複写 [資料調査] 岩手県における実地(遺物実見等)調査8月3~5日岩手県立博物館ほか 秋田県における実地(遺物実見等)調査8月25~27日秋田県立博物館ほか 宮城県における実地(遺物実見等)調査10月1~3日東北歴史博物館ほか これらの実地調査によって、東北地方出土の奈良・平安時代の遺跡から出土した宗教関文字資料についての基礎的な知見を得た。その後、文献資料検索・調査で得た資料によって、出土遺跡・遺構の事実認識と研究史の整理と把握を行った。とくに仏教、道教および陰陽道と関連する語句が、木簡・漆紙文書・墨書土器などにみられることに注目し、これらについての集成的研究を行った。また、前年度調査した関東地域などの古代文字資料との相互の比較検討と出典論的研究を経て、奈良時代~平安時代における仏教、道教および陰陽道に関係する語の分布について、地方的な傾向を示し、東北地域では官衙的属性を有する遺跡から、陰陽道関係の文字資料が出土する傾向を把握した。あわせて、仏教関係文字資料についても、他地域との比較研究を行った。これらについては、別項で示した口頭発表および論文で研究内容を公表した。
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