本研究は、日本の古代律令国家における官衙と寺院がいかなる場所に造営され、占地上、どのような関係を有していたかを広汎な視点から検討し、律令支配体制の一つの表徴たるこれらの施設の立地面での特性を探るとともに、それが果たした政治的な役割を解明することを目的としている。近年の地方官衙や寺院における調査事例の増加は著しく、良好な資料が数多く蓄積されつつあるが、これらの研究成果をふまえつつ、本研究が目的とする占地面での検討を加え、官衙と寺院それぞれの分析と相互の比較を重ねることで、律令制を支えた施設群の立地的特性と、それが果たした政治的機能をより深く解明することができるものと考える。 三年目にあたる本年度は、まず、前年度までに収集した藤原京以後の都城のデータ分析を継続しておこなった。 その結果、古代の都城造営に用いられた測量技術に関する理解を深めることができた。 また、畿内および東海道・東山道諸国の官寺ならびに氏族寺院、さらには一部の山岳寺院を対象として、占地に関するデータの収集を継続した。実地踏査を含めて、水系上の位置や標高および周囲との比高、丘陵や平地との関係、主要道路からの方向と距離などを整理し、寺院の性格の違いによる占地の差が認められるのか、それらが時代によりどう変化するのかを探る材料を得ている。 このほか、東海道・東山道など、諸国の官衙を対象として、国衙・郡衙・駅家など、おのおのの性格の違いに着目にしつつ、占地に関するデータの収集を継続した。同様に、水系上の位置や標高および周囲との比高、丘陵や平地との関係、主要道路や同時代の官衙・寺院からの方向と距離などを整理し、官衙の性格の違いによる占地の差が認められるのか、寺院とは異なる官衙としての立地上の特性が存在するのか、という点についても、一定の見通しを得つつある。
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