発掘調査の成果のなかで遺物実測図は、遺構実測図と並び極めて重要な記録である。しかし、いかに美しい図に仕上げるという観点から描かれることもあり、実測図を構成する線などの要素の意味が正しく捉えられず、標準化もなされていないのが現状である。このため各地で出版される発掘調査報告書の図を統一的に理解することには困難が伴い、電子化されている図であっても図の構成要素から検索するといったことはできない。 本研究では、発掘調査記録全般を適切に機械可読化することによって、発掘調査成果の共有・流通・活用を容易にすることを目的としており、初年度は遺構図の問題に取り組み、今年度は遺物実測図における表現要素と実際の遺物の状態との関係を分析してきた。土器の実測図においては、成形・調整・施文といった土器の製作段階と対応した観察結果の表現、土器使用時の痕跡に関する表現といった分類と、実測図の表現形式との間に機械可読可能な要素があるかどうかを検討してきた。遺構実測図と同様、遺物の実測図においても、図を構成するそれぞれの線種が意味によって結びつくものでなくてはならない。 遺物実測図の構成要素は、遺構実測図の構成要素とは異なりGISソフトでの処理にはそのままではなじまない部分がある。研究の見通しについては、関係する学会(太平洋近隣友好協会)で発表した。GISソフトの増強が遅れたので、構成線を意味づけしてまとめていくようなオブジェクト指向的な処理の試行については、来年度の課題として残されることになった。
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