平成21年度は準備期間・基礎研究として、各地の博物館・資料館に所蔵する経筒及び経塚山土資料、ならびに関連資料の現地調査を実施した。 本研究の対象は主に九州内での出土資料を対象としているが、過去に盗掘を受けて「伝北部九州出土」とされる資料が全国の博物館・資料館に点在しているため、調査は全国に及び、東京国立博物館を中心として関東周辺の資料館等においても資料の調査を行った。 既存の研究論文、書籍等により資料の分布・所在確認を行い、必要な資料に対してできうる限り実見した。初年度に実見した資料等から全体的な傾向として、北部九州に顕著に見られる輸入の専用陶製経筒の分布域は中国地方に散在される程度であり、転用品についても輸入品は近い傾向にあることが認められた。また、東海、関東地域における転用経筒については輸入品を転用するのではなく、国産の模倣品を転用する傾向がみられた。 銅製経箇においても輪積式経筒について陶製専用経筒に似た傾向があることが予想され、平成22年度にこの件について詳細を調べる計画である。 また、大分県を中心に分布する「国東型経筒」について資料の実見を行い、調査を進めた。現状では北は福岡県東部、南は宮崎県に分布が認められるが、大分県が分布の中心域であることは先行研究の域をでるものではない。ただし、福岡県みやこ町宮田遺跡出土で現在知られている唯一の銅製経筒の土製鋳型が国東型経筒を生産した鋳型の可能性がある。経筒の生産地と分布域との関係について明らかにすることが期待でき、平成22年度も引き続き調べる予定である。
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