平成23年度は研究の最終年度であり、21・22年度未見であった各地の博物館・資料館に所蔵する九州.伝九州出土経筒及び経塚関係資料の現地調査を行った。古美術店や個人蔵として所蔵されている資料もまだ相当数存在すると考えられるが、主要な公共博物館・資料館所蔵資料で館蔵図録や報告書等で既に報告されている北部九州出土経筒(伝含む)についてはその大半を確認できた。 経筒本体の型式分類についての先行研究を再検討した結果、先行研究の分類について大枠として追認した。しかし、属性単位での分類において塔(相輪)形鈕と宝珠形鈕の二者に大別し、分類することでより明確な分類を行うことができる事がわかった。この分類は銅製経筒の大半だけでなく、陶製専用経筒や滑石製経筒にも当てはめることも可能である。 科学的分析については九州歴史資料館においてCTスキャン装置及び蛍光X線分析についていくつかの経筒について調査を実施した。CTスキャン装置による断層写真では蓋が吸着して内部を窺い知れない資料について経巻の残巻の有無だけでなく何巻が残っているかをも確認することができ、装置の有効性を実証できた。また、経筒本体についても透過することにより目視で判別しずらい後世の補修などが明らかとなった。これに反して蛍光X線分析については概ねの方向性を見いだすことが出来たが資料測定の部位により結果が安定しない事も明らかとなった。サンプリング作業によりフレッシュな面を測定しなければならず今後の課題となった。 また、研究の総括として九州歴史資料館において企画展示「北部九州の霊山と経塚」を行い、またこれに関連した3本の講演を行い、研究成果を一般に報告する機会を得た。
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