研究概要 |
本研究は,米国の都市政策に採用されつつある"Regional City"の概念が,わが国における今後の都市政策においても有効であると考え,集約型都市構造の構築が地域に及ぼす影響を計量的に明らかにするとともに,個々の都市の集約化が複数の都市による"Regional City"の形成に発展していくための可能性を検討して今後の方向性を示すことを目的としている。 平成21年度に行った研究によって,"Regional City"の概念に基づく都市群の再編は,大都市圏に組み込まれ機能的な分業体制が確立している市町村よりも,経済的に依存する大都市が近隣に存在せず,自律的な成長も難しい地方圏に含まれる市町村において必要であることが分かった。そのため,平成22年度においては,地方圏の市町村に対象を絞り,現況の整理と活性化を妨げている直接的な問題点の抽出を行った。 研究対象としたのは山形県の長井市であり,(1)行政による都市計画,(2)市民による「まちづくり」,(3)土地利用変化の3つの視点から調査を行った。前述したように,本科研費研究の総体的な目的は"Regional City"の形成が地域全体に与える影響を計量的に明らかにすることにあるため,現在と将来の土地評価を実際に行う必要がある。長井市を対する調査では,1年間にわたって市の総合計画策定のための経済再生戦略会議に出席し,現況と今後の都市計画に関する多くの知見と行政資料を得ることができた。また,「まちづくり」については,学生とともに実際の現場に赴き,アンケート調査ならびにインタビュー調査を実施した。土地利用については,市街地の全域を対象とした土地利用調査を行い,現況の土地利用図を作成した。さらに,土地台帳調査を行い,同市には寺社や戦前期の地主を中心とする大土地所有が残存し,独特な土地所有関係が形成されていることを明らかにした。平成22年度は主にこれらの調査に時間を費やしてしまった結果,分析結果については,その一部を論文1本と2回の学会発表で公表するのに止まった。分析によって得られた他の知見は,平成23年度の分析と合わせ随時公表していく予定である。
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