研究概要 |
本研究は,米国の都市政策に採用されつつある"Regional City"の概念が,わが国における今後の都市政策においても有効であると考え,集約型都市構造の構築が地域に及ぼす影響を計量的に明らかにするとともに,個々の都市の集約化が複数の都市による"RegionalCity"の形成に発展していくための可能性を検討して今後の方向性を示すことを目的としている。 平成21年度に行った研究によって,大都市圏域の都市よりも地方圏の中小都市の方が自立度が低く,Regional Cityへの再編が必要であることが判明したため,平成22年度は山形県の長井市を事例にしてRegional Cityを実践するために必要な要件の分析を行った。平成23年度は本研究の最終年次にあたるため,それらをまとめていくための作業にあてる予定であったが,平成23年3月に東日本大震災が発生し,本研究のフレームワークに欠落していたいくつかの視点が明らかになった。山形県は幸いにも被災を免れたが,被災隣接県として従前の活動とは異なる都市活動が観察された。Regional Cityは,コアとなる都市とその周辺地域との連携が全体の自立度を高めるという都市概念であるため,本研究の研究対象もコアとなる都市対する通勤圏レベルを想定してた。しかしながら,被災県に対する救援活動やその後の交流を観察すると,その活動範囲は想定していたRegional Cityの圏域を大きく越えるものであり,それらは都市の活性や都市住民の意識にも多大な及ぼすことが予想された。 そこで,23年度においては,本研究の総括を行う一方で,震災時における広域的な活動を誘発した要因を整理し,震災後の相互交流が地域に与えた影響を明らかにする研究を行い,平成22年度までの研究で見落としていた視点を補足した。研究対象としたのは,宮城県14市町村と山形県14市町で構成される仙山交流圏であり,平常時の交流活動が緊急時の救援活動に繋がっていくプロセスを明らかにした。分析の結果,(1)移動距離は広範にわたるものの,日常市の交流活動はコミュニティレベルの小さな活動であり,それらを自治体がバックアップする形で維持されてきたこと,(2)それらの活動は緊急時においては道義的心情のもとで対象都市に対する集中援助に結びついたこと,(3)このようなプロセスは人口10万人未満の中小都市において顕著に観察され,それ以上の規模の都市においては均一的な支援が優先される傾向が強い,ことが明らかになり,地方中小都市におけるRegionalCityの実践のためには,日常的な交流事業がもたらすより広域的な活動を加味する必要があることを指摘することができた。
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