研究概要 |
本研究では,条件不利地域において,地理的な条件から発生するデジタル・デバイドに対する地方自治体等による政策的対応,および,その結果として整備されたインターネット環境を利用して進められた地域の振興策の事例を調査・把握しようとした.本年度は,山間地域におけるブロードバンドメディアとしてADSLが早期に普及した地域であり,最近は,地元自治体による統合光ファイバー網整備が進められている長野県,および,地元ケーブルテレビ会社によって統合光ファイバー網の整備が進められた三重県の事例調査を行った.その結果,(1)長野県のような山間地域においてもADSLによって95%以上の世帯にブロードバンドサービスが可能であるが,実効的な通信速度の面で,本格的なブロードバンドメディアとしては限界が存在したこと,(2)地上波テレビ放送のデジタル化に対応するために,政府によってデジタル・ケーブルテレビ網整備の支援が進められており,三重県のように地元ケーブルテレビ会社と地元自治体との共同出資と政府補助金によって統合光ファイバー網が整備されたために,低廉な料金でブロードバンドサービスが提供され,結果的に,山間地域の方が平場の地域よりもブロードバンド普及率が高くなる現象も見られること,(3)長野県木曽のような地域では,地元自治体が政府補助金を利用して統合光ファイバーファイバー網の整備を進めたために,高速かつ低廉なブロードバンドサービスが提供され,先行して普及したADSLサービスが競争力を失うといった事態が発生していること,等が判明した.また,徳島県・高知県等においてブロードバンドを活用した特産品開発についての事例調査を行った.一方,地域的デジタル・デバイドの解消過程における,自治体の政策意図・問題点等を詳細に明らかにするために,全国10道県の349市町村に対するアンケート調査を行い,142市町村からの回答を得た.得られた回答については,自由記入回答や添付された地図・報告書類を含めて,全部をデータベース化する作業が完了しており,目下,集計作業中である.なお,今年度における研究成果の一部はDigital Communities 2009国際会議で発表した上で,国際誌Netcomに論文として投稿し,現在審査中である.
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