研究概要 |
本研究では,条件不利地域において,地理的な条件から発生するデジタル・デバイドに対する地方自治体等による政策的対応,および,その結果として整備されたインターネット環境を利用して進められた地域の振興策の事例を調査・把握しようとしている.本年度は,昨年度に引き続いて,全国の市町村を対象としたアンケート調査を行った.三大都市圏,政令指定市および昨年度調査対象を除く全国960市町村に対して郵送依頼・メール回答方式で調査票を配布し,311市町村からの回答を得た.昨年度分と合わせた回収数は453,回収率34.20%である.その結果,(1)ブロードバンド環境の整備は大多数の市町村で進んでいるが,8.9%の市町村が3割以上の地区でブロードバンドが利用できないと回答しており,地域によってはブロードバンド未整備の地区が相当残存している.(2)過疎地域市町村の中で,ブロードバンド・ゼロ地区が3割以上の市町村は34.4%もあり,過疎地におけるブロードバンド整備の遅れは明瞭である.(3)回答市町村で実施されたブロードバンド整備事業のうち36.6%が地域情報通信基盤整備推進交付金,16.70%が新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の制度を利用している.(4)ブロードバンド整備事業はデジタル・ケーブルテレビと共用のものも多く,回答された整備事業の37.3%はケーブルテレビの整備事業と認識されていること,などが判明した.さらに,アンケート調査の回答市町村の中から,特色あるブロードバンド整備を行っている離島市町村を選んで現地調査を行った.具体的には,長崎県五島市,広島県大崎上島町,沖縄県渡嘉敷村における整備を調査し,その結果,(1)小規模離島では,本土への渡海光回線の確保が大きなネックとなること,(2)付属小離島への接続は無線回線が中心となること,(3)小規模離島では,デジタルテレビ化が光ファイバ網整備のインセンティブにはなりにくいこと,(4)需要規模の小ささに対応するために多様な形態のIRU契約が活用されている,ことなどが判明した.
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