研究概要 |
本研究では,条件不利地域において,地理的な条件から発生するデジタル・デバイドに対する地方自治体等による政策的対応,および,その結果として整備されたインターネット環境を利用して進められた地域の振興策の事例を調査・把握しようとしている.本年度は,一昨年度および昨年度に全国の市町村を対象として実施したアンケート調査から得られたデータの詳細な分析を行った.このアンケート調査は三大都市圏,政令指定市を除く全国1,326市町村に対して調査票を配布し,453市町村からの回答を得た.回収率は34.2%である。その結果,(1)各市町村が実施したブロードバンド整備事業では,地域情報通信基盤整備推進交付金もしくは新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の補助金を利用しているものが過半であり,この2つが各地のブロードバンド整備を大きく推進したことが認められる.(2)ブロードバンド整備事業を実施した市町村ではブロードバンド・アクセスの顕著な改善が認められる.(3)ブロードバンド整備事業によってブロードバンド・アクセスが改善された市町村では,観光や物販の分野で,インターネットを利用した地域活性化活動が活発になっていることが確認できる.(4)2000年代後半からIRU方式を利用したブロードバンド整備が増えており,条件不利地域におけるブロードバンド整備を容易にする効果が認められるが,離島における島外接続回線の整備等,IRU方式の枠組みでは対処できない場合もあり,万能とは言えない.さらに,北海道利尻島・礼文島の現地調査を行い,利礼3町の連携事業として光ネットワークの整備をIRU方式で行った詳細を把握した.このネットワークは,インターネット接続のほか,地デジ難視聴対策としても利用されており,一般家庭以外にも,海産物の直販等に利用されるなど,特色ある活用法が見出された.一方,ブロードバンド環境を利用した地域振興の事例として,(株)いろどり(徳島県上勝町)による「葉っぱビジネス」を取り上げ、物販による地域振興への活用を検討した。その結果、本事業の成功が、光ファイバー網を活用した全国の卸売市場との緊密な情報交換に加えて、既存の防災無線網を用いた域内での情報授受や、高齢者向けPCの導入など、既存資源の活用やインタフェースの開発に支えられている点を明らかにした。
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