研究課題/領域番号 |
21520795
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
豊田 哲也 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (30260615)
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研究分担者 |
中川 聡史 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10314460)
長尾 謙吉 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50301429)
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キーワード | 人文地理学 / 地域格差 / 世帯所得 / 人口高齢化 / 経済構造 / 大都市圏 / 人口移動 / 平均寿命 |
研究概要 |
社会経済構造が急速に変化する中で、所得格差に対する関心が世界的に高まっている。わが国においてもかつての「中流神話」が崩壊し、富裕層と貧困層への分極化が指摘されて久しい。また、一極集中が進む首都圏と経済的疲弊に苦しむ地方圏の間で、地域格差をいかに縮小するかは重大な政策的課題である。ところが、家計所得の地域間格差に関する実証研究はこれまで非常に少なかった。格差の把握には何を比較の対象とするかが重要である。地域間で平均的所得水準に差があること(地域間格差)と、地域内で所得分布にばらつきがあること(地域内格差)は、異なる概念として定義しうる。また、地域間格差を三大都市圏で見た場合、東京と京阪神の間で格差が拡大すると同時に、東京と名古屋の間で格差が縮小しているとき、両者を単純化し一語で表現することはできない。このような意味で地域格差はきわめて複雑な現象と言える。本研究では、住宅・土地統計調査の「世帯の年間収入」を用いて所得格差を推定し、家計所得の分布と変化を地域間格差と地域内格差の両面かち検証した。今年度は新たに非集計ミクロデータを使用することにより、人口高齢化や世帯規模の縮小など人口学的要因の影響を取り除いて推計精度の向上を図った。その結果は、時期や把握法により錯綜した状況を示す。すなわち、1998~2003年に都道府県の地域間格差は全体として縮小したが地域内格差は拡大した。2003~08年は逆に、地域間格差は拡大したが地域内格差は縮小した。また、市区町村単位の分析結果からは、東京大都市圏の都心部で高所得層が急速に増加していることが判明した。こうした変動が経済や政策の動向とどう関連しているか、また所得格差が地域間の人口移動や健康水準にいかなる影響を与えているか、理論的な検討と実証的な分析を継続中である。
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