研究概要 |
本年度は、(1)1980年代から90年代に日本に受け入れられた「インドシナ難民」を対象とする施策、(2)個別難民の審査システムや受け入れ制度および支援体制、(3)個別難民の定住後の生活状況の3点の解明を課題とした。(1)については、これまでの調査結果を著書『オーストラリアと日本の市民権-ベトナム難民女性の再定住の経験から(Women,Citizenship and Migration:The Resettlement of Vietnamese Refugees in Australia and Japan)』として刊行した。(2)については、入国管理局が運営する施設に拘束中の庇護申請者を支援する団体への聞き取りや、これらの団体のメンバーとともに収容された人々を訪問して情報収集を行った。また、2010年よりタイの難民キャンプのミャンマー(ビルマ)難民の受け入れ(第三国定住)が開始されたため、これについての調査も手がけた。第三国定住事業の委託を受けた民間団体によれば、情報公開についての制約があり、この団体からの聞き取り調査や文献資料を得ることはかなわなかった。(3)については、文献資料を中心とするデータ収集を行った。 これらの調査に加えて、昨年度より持ち越された課題である地理学分野での難民・庇護申請者に関する研究のレビューを行うため、主に2000年代に刊行された英語文献を収集した。ここで明らかとなった地理学における難民研究の動向については、2011年3月に日本地理学会春季学術大会におけるエスニック地理学研究グループの例会で発表する予定であったが、震災により学会が中止となった。そのため、発表は翌年度の日本地理学会秋季大会エスニック地理学研究グループの例会で行った。
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