GPSテレメトリー調査より得られた詳細なデータ(1時間毎)を、第6回・第7回自然環境保全基礎調査の植生調査の地図上と2500分の一の大津市域図上に落としイノシシの行動特性を分析した。今回注目したのは、5月~8月にかけて入手したオスの行動特性である。 イノシシは5月9日の捕獲地点(標高180mほど)での放獣後、標高の高い山間部(標高340mほど)に一時的に避難するような行動をとった。翌日の10日には標高210mほどの沢沿いの荒地(植生調査ではコナラ群落)に移動し、13日まで滞在後、同日に標高340mほどのスギ・ヒノキ・サワラ植林地に移動した。その後、この場所と標高270mほどの谷の頭部を行き来し、20日に捕獲された地点の近くに降りてきた。 その後は、水田や畑の周辺に居ついた。このイノシシに特徴的であったのは、5月30日頃から標高160~170mの緩傾斜の耕作放棄地(藪地)の一角を昼間の潜伏地(休息地、寝屋)として集中的に利用したことである。ここは斜面の上部と下部の平坦地に水田や畑がみられ、イノシシにとって農耕地にアクセスしやすい場所であった。 5月31日~6月2目にかけてのデータから比較的精度の高いものをひらいあげると、31日は午前0時~4時にかけての水田雑草群落(水田、耕作放棄地など)を移動しながらの行動(餌さがし)、午前10時~午後3時にかけての耕作放棄地(藪地)での移動を伴わない潜伏、午後9時~11時にかけての餌さがし、6月1日は午前0時~4時にかけての餌さがし、午前5時~午後7時にかけての潜伏、午後9時~10時にかけての水田雑草群落での餌さがし、6月2日は午前1時~4時にかけての餌さがし、午前5時~午後7時にかけての潜伏、午後8時~11時にかけての餌さがしといった行動が示された。 その後、約2カ月間にわたり、緩斜面の耕作放棄地を潜伏地として、斜面の上部と下部にひろがる平坦地の水田雑草群落で餌さがしをするパターン化された行動がみられた。
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