マレーシア、サラワク州、バラム河流域の狩猟採集民であるプナン人集落において、2度のフィールドワークを行った。同流域のプナン人の炭水化物源は主にサゴヤシである。サゴヤシの種類としては、プナン名で「ウヴッド(Uvud)」、「ジャカ(Jakah)」、「イマン(Iman)」、「ルセイ(Lesei)」、「ニヴン(Nyivung)」、「アナウ(Anau)」と呼ばれる野生種が利用される。また、サゴヤシの幹の芯の部分を生で食べる種類もあり、「ダテ(Date)」、「スプラッ(Seplak)」、「ルヴユ(Levuyu)」、「ルムジャン(Lemujan)」、「スグラハ(Segelah)」、「スム(Sum)」、「ダンガハ(Dangah)」、「ミタイ(Mitai)」などがある。これらサゴヤシの多様性は遊動プナン人の自律的生存条件の要であるということができる。 プナン人の生活戦略の特徴と比較検討するために、ペルーとフィリピンにおける狩猟採集民の居住地を短期訪問した。前者はイモ類の栽培に関して、また後者は稲作に関して知識と経験をもっていることが観察できた。 なお、マレーシアでのフィールドワーク期間中、バラム河中流域のプナン人集落では、森林の商業伐採に抗議して林道封鎖を行っていた。サラワク州政府や伐採会社とプナン人との関係は依然難しいものがあることを実感した。 次年度は遊動プナン人に対する長期間のフィールドワークを計画している。また、まとまった分量の単著も発表する予定である。
|