研究課題/領域番号 |
21520815
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
野地 恒有 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60242898)
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キーワード | 移住開拓島 / 海域ネットワーク / 海縁 / 民俗学 / 瀬戸内海 |
研究概要 |
長崎県長崎市、岡山県岡山市・倉敷市玉島、香川県丸亀市、山口県柳井市・周防大島町、広島県広島市・廿日市市宮島町・尾道市向島、宮崎県宮崎市、大分県大分市において、移住開拓島や移住集落と、周辺地域との間で結ばれる人・技術・モノの海域ネットワークの構築という観点から現地調査あるいは文献調査をおこなった。この年度の課題として、瀬戸内海域の移住開拓島の形成プロセスにおける海域ネットワークの実態をとらえることに重点を置いた。 調査結果は以下のとおりである。 1、移住開拓島のなかで、有人島化せずに無人島化した事例を確認し、その無人化の実態を調査した。 2、移住開拓島が無人化せずに有人化するプロセスにおいて、周辺地域との間にネットワークを作り出す人(仲買・鮮魚業者や「通い」という生活スタイルをとる漁業者)、技術(漁撈技術)、モノ(海産物)が重要な役割は果たしてきた(果たしている)実態をとらえた。 3、そうした周辺地域との間に形成される海域ネットワークを「海縁ネットワーク」ととらえ、移住開拓島研究の分析視角として提示した。「海縁」とは海を媒介とした関係のことである。社会の内部にはりめぐらされている諸関係を内縁系、社会の外部にはりめぐらされている諸関係を外縁系ととらえて、移住開拓島(移住社会)とは外縁系が優位になって構築されている外縁系優位社会であり、その外縁系の一つが海縁ネットワークであるとした。海縁ネットワークは移住開拓島をとらえ分析する視角であり、地域おこしや復興ビジョンにつなげられる課題につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、移住開拓島の形成を周辺地域と結ばれる海域ネットワークの構築という観点から調査研究して定住生活の成立過程の特徴を明らかにすることであり、現地調査はほぼ計画通りに進めてきており、最終年度の来年度の総括に向けて「海縁ネットワーク」という新しい分析視角を提示し得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は最終年度にあたり、以下のとおりに推進する。 1、現地補充調査を進める。 2、平成21年度から24年度に得られた調査資料のまとめと分析をおこなう。 3、香川県丸亀町小手島の移住開拓史における周辺地域とのネットワークの形成を明らかにするとともに、瀬戸内海海域における移住開拓島の形成について「海縁ネットワーク」という視角から考察を進め、成果の公表を図る。
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