岡山県岡山市、香川県丸亀市、愛媛県西条市、広島県広島市・三原市において、移住開拓島や移住集落と、周辺地域との間で結ばれる人・技術・モノの海域ネットワークの構築という観点から現地調査あるいは文献調査をおこなった。この年度の課題として、瀬戸内海域の移住開拓島の形成プロセスにおける無人島化の実態をとらえることに重点を置いた。 調査結果は次のとおりである。移住開拓島のなかで、有人島化せずに無人島化した事例を6例確認した。無人島化は過疎化とは異なり、移住開拓島の定住化プロセスにおける途絶をあらわす。 最終的に、定住化に成功した移住開拓島に注目して、定住過程で構築された漁業活動が作り出す周辺地域との関係(海域ネットワーク)について調査してきた過程で、瀬戸内海域においていくつかの移住開拓島が確認されるとともに、その多くが無人島化していることがわかった。 そこで、定住化に成功し持続している事例だけを対象とするだけでなく、定住化に失敗し無人島化した移住開拓島の事例にも注目して、その定住生活が途絶していった過程を対比的にとらえて定住化に成功した事例と比較研究することにより、移住社会の定住過程や移住社会の特徴を、より一般化した形でとらえることができるという新たな見通しを見出した。移住開拓島を定住化・無人島化と対比させ、移住後に構築される生活を持続する生活体系・途絶する生活体系と対比させて、移住開拓島の形成過程をより一般化した形でとらえられる。
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