喜捨と慈善の活動を行っている団体はキリスト教系やイスラーム系など多岐に渡るが、本年度はそのなかでも華人民間信仰系の団体に着目した。シンガポールにおいて、華人民間信仰系の慈善団体も多数あるが、そのなかのとくに潮州系の慈善活動に焦点を絞り、潮州善堂の活動に対して調査を行った。19世紀末から20世紀前半にかけてシンガポールへ移民してきた多くの中国からの移民に伴って、多数の宗教もシンガポールへもたらされることになったが、そのなかのある善堂に着目し、その歴史的経緯や目的、現在の活動について関わる人々の見解、今後の展望などについてインタビューを行った。 また、政府の社会政策と連動させた新たな形での善堂の社会貢献の形についても、その理念の背景を理解するために関係する人々から話しを聞くことができた。さらに、善堂は今日的な状況、社会問題などについて独自の見解をもって、新たな方針を立て取り組んでいることもわかった。 これらの調査によって、国家主導の開発モデルのなかに、信仰を基盤とした市民のコミュニティがどのような形で関わることができるのかを理解する手がかりを見出すことができたという点において、意義があったと考えることができよう。
|