研究概要 |
昨年度に引き続き、資源管理をめぐるローカル・ポリティクス、資源をめぐる国家、共同体、市民社会の関係がグローバル化の過程でどのように変容しつつあるか、国家の資源政策と共同体の文化・価値観の変容などの諸問題を分析するための理論的枠組み構築のため、資源人類学、ポリティカル・エコロジーなどの近年の諸成果をレビューし、整理した。その成果は11月13日、14日につくば市にて開催された国際フィリピン研究学会(Philippine Studies Conference in Japan 2010)にて報告された。本学会では、"Environmental Change, Resource Management, and Community in the age of Neoliberal Governmentality : A Case from the Philippine Localities"と題するバネルセッションを設け、海外からの報告者としてアリゾナ州立大学教授のJames Eder氏、クイーンズランド大学(オーストラリア)准教授のWolfram Dressler氏、オーストラリア国立大学の瀬木志央氏を日本に招聘した。具体的にはこのセッションでは、グローバル化とともに浸透するネオリベラリズムを背景に新たな展開を見せる資源管理制度と、資源利用者達の日界世界との接合の局面に焦点が当てられた。そのような局面において、人々が状況依存的に可能な資源利用形態を選び取り、自らの生活設計を便宜的かつ暫定的にではあれ構築してゆく社会的実践を、フィリピン各地における資源管理の事例から議論した。このようなセッション報告に対して、アメリカ、オーストラリア、フィリピンなど世界各国からの参加者から有意義なコメントが寄せられ、最終年度に向けた方向性の明確化を行うことが出来た。
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