(1)ブラジル・アマゾンにおけるフィールドワーク(9/2-9/12):ブラジル北部、アマゾン河中流域に位置するサンタレンおよびアルテール・ド・ションにおいて、同地域の先史文化であるサンタレン文化(殊に土器)が、現住民にとってもつ意味について実態調査を行った。サンタレンでは、ジョアン・フォーナ展示館において造形作家兼郷土史家レオン氏への聞き取りを中心に調査し、地域文化および地域アイデンティティのなかで、先史土器が言わぱ「ロゴ」として遍在している一方で、その内実が「空虚」であることが明らかになった。アルテール・ド・ションでは、陶器生産および「フェスティヴァル・ド・サイレ」の調査を実施した。陶器生産については、かつて行われていた実用土器の生産がほぼ終焉を迎えていること、観光客向けの先史土器のレプリカおよびコピーの生産は(かつてブラジル零細小企業支援協会が講習をおこなって実作者を養成したときに)期待されたほどの規模には至っておらず、依然として観光土産の民芸品はベレンをはじめとする他の生産地の後塵を拝している現状が明らかになった。他方、アマゾンを代表する民俗文化フェスティヴァルとなっている「サイレ」の調査を通して、先史文化およびアマゾン地域アイデンティティの商業的利用と、地域共同体の伝統的祝祭としての「サイレ」の間の複雑な関係の実態を知ることができた。(2)研究機関における調査(8/26-9/1):ベレンのエミリオゲルヂ博物館の研究者を中心に、アマゾン中流域における陶器生産および自然教育プロジェクトの現状について調査をおこなった。(3)日本国内における文献研究(全期間):考古学および人類学における「物質性」に関連する文献研究を広汎に実施し、従来おこなわれてきた環境人類学や物質文化研究とは違ったアプローチで、物質世界と人間の文化について考察する方向を見いだすことができた。
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