平成22年度における本研究プロジェクトの主たる課題は四つあった。第一は、奥会津地方での民俗調査を本格化すること。第二は、八丈島での民俗調査の成果を論文にするためのデータの集約方法を検討し、予稿をまとめること。第三は、奥会津と八丈島で少子高齢化に対応する施設・施策に関する調査を積極的に展開すること。第四は、調査地住民の皆さんに研究成果を還元すると共に、研究の進展を促すため、民俗に関するさらなる知見、少子高齢化施策をめぐる要望や意見の提供を求めるための機会を設けることであった。 第一に関わっては、特に、昭和村両原地区での全戸調査を完了し、従来、奥会津地方では把握されていなかった位牌分けの慣行や頻繁・長期に及ぶ嫁の里帰り慣行の存在を発見した他、同類的な親族の組織化、順番制を基本とするムラの自治慣行の特色を把握し、社会構造の解明を進展させた。また、金山町山入り地区における農業用水管理の共同作業や神社祭典と演芸大会、村歌舞伎公演と芸能大会の運営に注目し、ムラの自治活動における高齢者の関わり方の特色を考察した。八丈島では、風土病に関する史料の収集を進展させた。また、古文書の整理・保存は、DVDへの記録の段階に進んだ。第二に関わっては、八丈島中之郷地区の伝統的な文化や社会構造の特色を顕著に示しているとみられる民俗の選定を行い、それらの詳述を核とする成果の論文化を図ることとした。第三に関わっては、昭和村と八丈島の介護施設・施策をめぐって関係資料の収集や関係者からの取材を概ね完了させた。第四に関わっては、八丈島で住民も対象としたセミナーを開催し、主にシャーマン研究の成果を発表。南海タイムス紙でも紹介された。また、前年度から準備を進めてきた島嶼コミュニティ学会の設立プレワークショップを開催し、研究協力者の一部が八丈島研究の成果の一端を発表した他、学会誌「島嶼コミュニティ研究」第1号の編集を進めた。
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