フランス・マルセイユ市において、平成21年2月5日から3月5日までの約1ヵ月間、コモロ系移民の社会的紐帯に関する調査を実施した。調査では、マルセイユ市のFelix-Pyat地区にある公営低所得者用住宅(HLM)に多く住む主にグランドコモロ島出身者を対象とし、同じ島や村、地区などを単位としたコモロ系移民による同郷組合(Association)の組織とその活動についての聞き取り調査を行った。その結果、マルセイユのコモロ系移民全体の組織とした活動してきたFECOMが2001年に解体するなど、90年代後半までのコモロ系移民の増大や、第二、第三世代の登場による移民の生活様式の多様化により、マルセイユのコモロ系移民のネットワークは、より小規模な地域や村を単位とした無数の同郷組合へと分化する傾向が見られることが分かった。また、そうした小さな同郷組合は、故郷村への援助資金調達のため毎週のように様々な行事を開催するなど活発な活動を行うことで、第二、第三世代の若者もそのネットワークにとり込み、移民集団内部での連帯を築くとともに、移民と故郷との強い紐帯を維持し、再生産していることが明らかになった。
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