研究概要 |
本年度の研究では、現地調査による資料収集と、その調査データに基づく同郷組合の活動実態の解明を進めた。平成23年3月3日から3月25日までの約3週間、フランス・マルセイユ市におけるコモロ系移民コミュニティの調査を実施した。調査では、90年代以降に急激に増加した、故郷村や地域を単位とした同郷組合(Association)の組織化と変化について、複数の同郷組合のメンバーから聞き取りを行った。また、グランドコモロ島・マジェウェニ村の同郷組合組織(Alwatan Noir)について集中調査を行い、故郷村との政治的、経済的結びつきの実態と、故郷村への援助を目的として毎週のように開催される三種類の行事(Madjilissi, Wadaha, Toirabu)における参加者の属性、事務的手続き、参加を通じた関係の広がりなどについて聞き取りを行った。調査により、故郷村の長老会議を中心とした伝統的ヒエラルキーをもつ政治構造を保ちながらも、援助への貢献度における同郷移民間の「名誉」をめぐる新たな競争的関係が発生しており、それにより、マルセイユのコモロ系移民社会には、独自な社会関係と「援助文化」が創造されていることが明らかになった。
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