本年度は、これまでの調査データを補完する為、平成23年12月21日から平成24年1月20日までの期間、フランス南部・マルセイユ市におけるコモロ系移民の同郷組合活動についての現地調査を実施した。 調査では、ムワリ島からの移民コミュニディ、およびンガジジャ島のS村からの移民コミュニティにおいて集中的に聞き取りを行い、特に以下の主題について資料を収集した。 (1)同郷村の集団が結びつくネットワークの形成と同郷組合が結成された歴史過程。 (2)故郷村の親族との紐帯の維持と経済的支援関係の実態。 (3)故郷村における伝統的な年齢階梯制度による社会的ヒエラルキーの構造今の移民の組み込み。 (4)同郷組合による故郷村への援助活動の組織化と「援助文化」の形成。 (5)故郷村への贈与交換的な援助活動を通じた社会関係の形成。 調査資料の検討から、グローバル化にともなう移民と故郷とを結びつける環境の変化にともない、両者の関係はより緊密なものになっており、特に、1990年以降に急激に増殖し、顕在化した同郷村のアソシアシオンの活動を通じ、コモロ系移民と故郷とのトランスナショナルな紐帯が維持されているだけでなく、故郷村への援助を目的とした集合的な「援助文化」の形成と、援助という贈与交換を通じた新たな社会関係の形成がみられることが明らかになった。
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