本研究は、ヨーロッパ、おもにドイツにおけるトルコ人移民労働者を対象とし、彼らの出身地であるトルコの農村とのネットワーク構築に関する考察を通して、トルコ移民たちと出身国の農村に残った者たち相互の生活戦略を文化人類学的に探究することを目的とする。初年度の昨年21年度にトルコ側の調査地であるM村を再訪して得た情報から、今年度22年度にはM村出身者の住むドイツ、エッセンにおいてネットワーク構築に関する聞き取り調査を行なった。調査を断食月に遂行したので、ドイツにおける断食月の状況を同時に調査することができた。 ネットワーク構築に関する成果として、ドイツへの移民に対するM村在住者の眼差しとドイツへの移民であるM村出身者のドイツへの眼差しの差異に注目した「トルコ人のドイツへの移民」(『中東・北アフリカのディアスポラ』明石書店)を2010年5月に、村とドイツの中間地点である町に焦点をあてた「トルコ-村と町とドイツと」(『西アジア』朝倉書店)を同年9月に、ドイツ、ドルトムント市のM村出身者について行なった調査報告「ドイツに再現されるトルコの村-ドイツ、ドルトムント市におけるトルコ人移民調査に関するフィールド日記」(『貿易風』印刷中)をそれぞれ出版した。またこれまでの代表者の研究で重要な視点であったジェンダー研究の成果として、2010年10月にトルコ、チャナッカレ・オンセキズ大学で開催された国際シンポジウムにおいて、トルコと日本の女性教育と社会発展に関する発表を招待講師としてトルコ語で行なった。
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