本科研二年目の平成22年度の研究実施計画では(1)口頭発表、(2)論文執筆、(3)現地調査の実施、の三点を掲げていた。それぞれについて実施状況を検討する。 まず口頭発表では予定通り、5月上旬にカナダで開催されたCongress of Ethnobiologyでエチオピアの農耕民マロにおけるオオムギの栽培と利用に関して発表を行い、5月下旬の日本アフリカ学会では、エチオピア西南部の複数の山地社会における野生および半栽培のサトイモ科植物の利用と資源管理について発表した。さらに7月にはイギリス・オックスフォードで開催された食文化のシンポジウムでエチオピア西南部のエンセーテ(Ensete ventricosum)のデンプンの発酵利用について議論を行った。このように口頭発表は計画以上に実施できた。 他方、論文執筆は、エチオピア西南部におけるテンナンショウ類などの利用に関する報告をまとめ、マロにおけるムギ類を中心とした穀物の栽培利用を報告する予定だったが、時間が取れずこれらを実施することができなかった。マロの協同労働の変化について議論していくことも予定していたが、やはりできなかった。これらは極力今年度行ってきたい。唯一進めることができたのは、マロ北西部で発生してきた集落放棄に関する分析である。昨年度は世界地名大事典のエチオピア関連項目の執筆を大幅に進めたが、結局完成にはいたらず、トータルの執筆状況は満足のいくものではなかった。 現地調査については、夏期に一か月程度エチオピア西南部の山地社会で調査する予定であったが、諸般の事情により昨年度も実施することができなかった。かわりに日本の山地社会で比較研究を8月末から9月初めに実施した。 このように研究計画がすべて実施できたわけではないが、本研究の目的に従った持続的社会に関する研究を鋭意進めてきているといえるはずである。
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